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福祉とか心理とか語学とか読書とか

真なる環境正義とはなにか?『反福祉論』

気づけば4月ももう折り返し。新生活がはじまり、バタバタしているうちに読んだ本を紹介します。

 反福祉論: 新時代のセーフティーネットを求めて / 金菱清・大澤史伸

反福祉論: 新時代のセーフティーネットを求めて (ちくま新書)

反福祉論: 新時代のセーフティーネットを求めて (ちくま新書)

 

目次
はじめに―いまなぜ「反福祉論」か
1 現代の「忘れられた日本人」―制度外の人びと自身による生活保障
・「飛行場」に住まう在日コリアン―不法占拠者による実践
福祉版「シンドラーのリスト」―生活困窮者の最後の拠り所
・大津波における「ノアの箱舟」―災害被災者の伝統的行動規範
・ドヤ街のスピリチュアル・ケア―ホームレスはなぜ教会へ?
2 福祉制度に替わるセーフティーネット
・ホームレスとしてのイエス・キリスト―制度からの解放宣言
福祉に挑むドン・キホーテ―ある研究者の知的遍歴
・生きられた法―法外世界の豊饒な議論へ

挑戦的なタイトルの本書ですが、決して社会福祉そのものを否定的に論じてはいません。筆者が目の当たりにしてきた事例を中心に、現代の福祉制度が抱える問題を探る、という内容です。

要するに、「とりわけ福祉領域では、万能な制度なんてありえないよね」というお話です。もっとも、この本では、じゃ万能な福祉のサービスってなんなの、なんで政府が策を弄するたびに新たな貧困問題が生まれるの、といった議論には着目していません。本書の強みであり、その面白さは、制度の枠組みに漏れ、生活困難に陥った当事者たちが、周りの支援を受けながら知恵を尽くして対処する問題解決劇を紹介しているところでしょうか。

「地域社会の柔軟なつながりを、当事者が積極的に利用することでレジリエンスを高める」ことこそが、真なる環境正義の実践であり、本来福祉制度が目指すところである、という着地を見せています。レジリエンスときくと、個人的特性ばかり着目しがちですが、本来は環境と個人のかかわりのなかで生まれる回復力を指すのです。また、後半から「イエス・キリスト福祉制度にとらわれない、社会のセーフティーネットを実践していた」という論調にはいささか「こりゃ大きく出たな」という印象を受けましたが、福祉の出発点がどこにあったかを思えば、決して無視できない仮説と言えます。

余談ですが、最近読んだ福祉の新書には、必ずと言っていいほど某芸能人の生活保護受給問題がとりあげられています。見つけるごとに「この本にも載ってる」と驚くことうけあいです。名前を伏せている本もあれば、本書のように堂々と(?)名前を載せている場合もあります。事件当時、自分は「これで『細かすぎて~』干されるんだろな~」程度の認識でしたが、いくらか福祉に興味を持った今は、あの問題が保つ意味を、改めて考えなおしてみたいと思います。

反福祉論 ――新時代のセーフティーネットを求めて (ちくま新書)

反福祉論 ――新時代のセーフティーネットを求めて (ちくま新書)

 

 

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