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海外SF小説初心者がとりあえず読んでみた5冊

 「やっぱりSFは映像媒体で楽しみたい!」、「翻訳ものは専門用語がややこしくて読みづらそう」などと勝手な理由を作っては、海外SF小説を敬遠してきた。そんな自分が、ものは試しといくつか読んでみたので、ここに紹介したい。
おおまかな選考基準は以下のとおり。

  • 『海外SF小説 まとめ』などでググれば、すぐに出てくる
  • SF特有の専門用語が少なく、世界観の理解が容易である(書店でざっと立ち読みして判断)
  • 激しい戦争ものは避けた(次々と登場人物が死ぬようであれば、気が滅入るだろう)

最後の基準は完全に個人的な理由ではあるけど、自分の小説を読む動機なんて、現実逃避や気分転換という場合が多いから、せっかくの余暇時間にテンション下げるのもねぇ、って感じ。

夏への扉

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

 

 1956年作。タイムリープもの。表紙がかわいい。笑いあり、涙あり、紆余曲折を経てハッピーエンド、と読み終えたあとの爽快感がすごい。まとめサイトでも『初心者向けにして至高』と紹介されているだけある。なにより、世界観がごくありふれた日常+近未来テクノロジー程度に収まっているので、一昔前のNHKドラマを観ているような感覚で読める。これを一冊目に選んで良かったな、と今では本当に感謝してる。

 なお、新訳版(夏への扉[新訳版])もあるらしいので、いつか読み比べてみたい。

星を継ぐもの

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

 

 1977年作。宇宙もの。ハードSFと称されるらしい。ジャケ買い・パケ買いならぬ、あらすじ買いを決めた作品である。

月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作。

 月面で見つかった人間らしき死体を巡って、世界中の科学者たちが自らの学説を臆せずぶつけあう描写は圧巻。こんな学会あったら聴講しててめっちゃ楽しいんだろうなぁ。本作品は「巨人のたちの星シリーズ」の一作目であり、物語はあと5冊分ほど続くらしい。続きは気になるけど全部読むのは大変そうだったので、漫画版を読んで補完することにした。多少の改編はあるものの、ほぼ原作に忠実である。

星を継ぐもの 1 (ビッグコミックススペシャル)

星を継ぐもの 1 (ビッグコミックススペシャル)

 

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

 

 1968年作。アンドロイド・人工知能もの。映画ブレードランナーの原作。なにかとタイトルがネタにされることで有名。いかにもなSF作品なので一度は読んでみたいと思っていた。冒頭の世界観の説明にやや面食らうものの、SF小説3作品目ということもあってなんとかついていけた。「人と人造人間を隔てるものとはなんなのか?果たして"隔たり"自体、存在するのだろうか?」人工知能への興味を高めてくれる一冊。

あなたの人生の物語

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

 

 2003年初版。表題を含む短篇8作品をまとめたオムニバス本。表題作については「サピア=ウォーフ仮説じゃん」なんてツッコミを入れながら読んでた。どの作品もテンポよくストーリーが展開していき、個性豊かな登場人物を通じて現代科学への警鐘や皮肉を味わえるなど、読んでて小気味いい。

月は無慈悲な夜の女王 

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748)

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748)

 

 1965-66年作。再び長編作品。『夏への扉』が面白かったので、作者(ロバート・ハインライン)つながりで買ってみた。流刑地としてあてがわれた月面世界で奮起した、月住民たちの孤高かつ大胆な独立戦争を描いた作品。こちらも表題がよくネタにされるらしい(2chSF・FT・ホラー板のデフォルト名無し、などなど)。本記事で紹介する中でも一番ボリュームのある作品で、ページ数は圧巻の686ページ。とはいえ、だれることなく読みきれたのは、野心に燃える月世界人たち(もっとも、主人公自身はやれやれ系だが)の活躍と、人間よりも人間らしいコンピュータ、マイクの存在あってこそだろう。あっ、普通に紹介してしまった。終わりかたは「うーむ、やっぱり」感があるものの、50年前の作品が予想する世界が、近年のスコットランド独立運動と照らしあわせても似通った点が多いとなると、作者の慧眼を称えるべきだろう。

以下は積ん読状態なのでタイトルだけ。読み終えたらまた別記事で紹介したい。

何かが道をやってくる (創元SF文庫)

何かが道をやってくる (創元SF文庫)

 

 

未来からのホットライン (創元SF文庫)

未来からのホットライン (創元SF文庫)

 

 いくつか海外SF小説を読んで思ったこと

  • 名作は月日を経ても色褪せない

作者の先見の明を褒めるべきか、人々の空想に追いついた現代科学を褒めるべきかの判断は任せるにせよ、半世紀経ってもなお、みずみずしい新鮮さを保つ世界観に触れられる贅沢さはSF小説ならではだった。

  • 異なるテーマごとに読んでくと飽きない

タイムリープ(タイムマシン)、ミリタリー、サイバーパンク人工知能、スペース・オデッセイ、スチームパンクなど、ひとくちにSFといってもさまざまなテーマが偏在するので、いくつかテーマにあった作品を選んでから、複数冊を平行して読んでいくのも楽しい。自分の場合、『あなたの人生の物語』と『月は無慈悲な夜の女王』は同時に読んでいった。

  • 読んでる最中は徹底的に現実逃避する

得てして、現実世界を拡張した異世界やら近未来やらに数多く触れることになるが、そのたびに「今でいうところのアレだな」と現実世界のカウンターパートを探していたら、なかなかページが進まなくて難儀した。一気に世界観に没入して読み終えてから、「そういえばアレだったな」と振り返るぐらいがいいのではないか。