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福祉とか心理とか語学とか読書とか

精読するなら黄色いダーマトグラフで書き込もう『考える技術・書く技術』

きみはダーマトグラフを知っているか!?

板坂元の『考える技術・書く技術』がべらぼうに面白かった。なんでこの本を買ったかというと、病院実習直前に「実習日誌の執筆勘を取り戻したい」と焦って、Amazonでテキトーに検索したんだっけな。

考える技術・書く技術 (講談社現代新書)

考える技術・書く技術 (講談社現代新書)

 

 梅棹忠夫知的生産の技術 (岩波新書)ほど堅くないけど、外山滋比古思考の整理学 (ちくま文庫)ほど軽くもない感じ。著者の板坂先生は日本文学者であり、PSW関係者にはひときわ名高いE.O.ライシャワー氏とも親交が深かったという。

商品紹介を引用すると

○脳は刺激を与えないと悪くなる
○「いつも」「みんな」という言葉は使うな
○朝は新聞を読むな
○ときどき、ふだん自分が興味のないジャンルを含め、あらゆる雑誌をまとめて眺め通すと、頭のしこりがほぐれる(ブレーン・ストーミング読書)。
○精読するときは、黄色のダーマト鉛筆を使って気になる部分に線を引く
○読み返しのときは、しばらく時間をおく
○日本語はピラミッド型、英語は逆ピラミッド型。だから英語を聞き取るためには、文の 最初に注目する。
○自分に必要な情報を保存するとき、見出しをつけるときは「名詞」ではなく「動詞」を 使う
○保存する引用、要約に自分の見解を加えるときは、色を変えて書く
○アイデアを妨げるのは、「自分にはできない」という否定的な自己暗示
○相手に理解し、同調してもらうためには、「仲間意識」をつくりあげる
○読み手を味方にするには、私小説的アプローチを入れる
○数量化は大切
○自分の説と他人の説の区別は重要

 

さらにざっくり要約すると

しょうもないことでも暗記せよ

 →どんな知識でもいつかは役立つ。無駄な知識こそ教養である。

気になったフレーズは書き留めよ

 →手持ちの引用や比喩が多いと便利。名言迷言もストックしよう。

麻雀、モノマネ、KJ法に習熟せよ

 →いずれも「型把握」に関する技術。物事の類似点に気づく思考を養おう。

読書や映像鑑賞などのインプットは並行して行え

 →比較しながら見たほうが知識も偏らない。相違点もつかめる。

本に書き込むなら黄色いダーマトグラフ

 →後述

見出しは文章にする

 →後述

とくに印象に残ったのが黄色いダーマトグラフで本に書き込む技術。本書以外にも各所で紹介されている(前述『知的生産の技術』では赤のダーマトが登場)らしく、プロの校正屋さんがチェック用に使うこともあるとか。

クレヨンと色鉛筆を合わせたような筆記具であるダーマトグラフは、軽い筆圧ですんなり線を引けるし、裏写りも少ない。蛍光マーカーの持つデメリットが解消されている。

 なぜ黄色を使うかというと、本人いわく「赤や青に比べて目にやさしい」とのこと。本人の記述にはないものの、コピー印刷する際に書き込み跡が消えて可読性が保たれることもメリットになりそう。

 

見出しを文章にすること。『幸せへの一考』ではなく『幸せについて本気出して考えてみた』にすること。思い返せば、自分も資格勉強にて知らず知らずのうちに実践していた。参考書に書き込む際には、専門用語のあとに簡単な文章で解説を添えていた記憶がある。

手元の参考書をあさって見つけた例だと、生活保護制度において、保護金品における租税を課せられない権利については、『公課禁止』に添えて『あげたものには税金取らない』なんて書いてあった。書いた記憶はもうないけど。

 

書いた箇所が湿気を帯びてインクになる高級鉛筆など、今回紹介しきれなかった文房具ネタや、読書術・文章術・発想法など、1970年代に出版されたとは思えない、示唆に富む内容ばかり。病院実習の行き帰りのバスで熱心に読んだことも含め、とても良き出会いをした一冊であろう。おわり。

最近買った本あれこれ~16年4月分

あいかわらずニートライフ晴耕雨読に勤しむ日々である。Amazonプライムで片っ端から映画&洋ドラを見まくり、本棚に眠ってた積読本を消化したり、改めて福祉小六法にラインマーカーで落書きをしたりするなど。ようするにヒマなのです。

そんな日々でも、一応意識して続けているのはソーシャルワーク関係の読書。精読できるかはさておき、とりあえずカバンに放り込んでいるのは以下の2冊。このブログでも何度も登場している。対人援助職の新人がブチ当たるであろう諸問題を、著者の体験を踏まえ丁寧に解説している。

対人援助の技法―「曖昧さ」から「柔軟さ・自在さ」へ

対話精神療法の初心者への手引き

 

さて、4月に入ってから買った本があるので備忘録も兼ねて紹介したい。

僕がいま、死について思うこと / 椎名誠

ぼくがいま、死について思うこと (新潮文庫)

ぼくがいま、死について思うこと (新潮文庫)

 

「自分の死について、真剣に考えたことがないでしょう」67歳で主治医に指摘された。図星だった。うつや不眠を患いながらも、死は、どこか遠い存在だった。そろそろ、いつか来る〈そのとき〉を思い描いてみようか――。シーナ、ついに〈死〉を探究する! 夢で予知した母の他界、世界中で見た異文化の葬送、親しい仕事仲間との別れ。幾多の死を辿り、考えた、自身の〈理想の最期〉とは。

 好きな作家の死生観に触れられるとあって、書店で迷わず手にした一冊。まさかあのシーナさんが「喪」について語るとは!ビールをグビグビ飲み、どんぶりめしをワシワシと食べてガハハと笑うイメージがあったので意外や意外。そんな彼の世界葬式見聞録がワンコイン(amazonでも税込497円)で楽しめる。とはいえ、自分が一番心惹かれた一節は、巻末解説の精神科医中沢正夫の言葉である。『人には「生き生き生きている人」と「生きている人」と「息をしている人」がいる』。はたして、自分は生き生き生きているだろうか……。

 はやぶさ式思考法: 創造的仕事のための24章 / 川口淳一郎

はやぶさ式思考法: 創造的仕事のための24章 (新潮文庫)

はやぶさ式思考法: 創造的仕事のための24章 (新潮文庫)

 

 夢を超えた―総移動距離60億km、幾多の危機を乗りこえ、地球に帰還した奇跡の小惑星探査機「はやぶさ」。世界初の偉業と七年間の飛行は日本中に感動を与えた。リスクと困難に立ち向かい、未曾有の成果をもたらした「はやぶさ」プロジェクトのリーダーが、ポジティブ加点法など独自の思考術と仕事術を提言する。

これもワンコイン程度で買える。さっきの椎名誠の本と抱き合わせで購入したものの、税込529円の本にしては濃密な内容。小惑星探査機はやぶさの開発事例から得られた、ポジティブな認知を高め、自由な発想につなげる思考法が記されている。「自己啓発本に2000円以上出すやつは騙されてる」が持論な自分にとって、値段も手頃な掘り出し本に出会えたと思う。まあ、でも、宇宙開発系の本って、宇宙飛行士をはじめ、登場人物全員が超エリートだから、思考や発想も試行錯誤で得たというよりは、はじめから自然と備わっている気がしないでもない。

 ふたりぼっち―精神科ソーシャルワーカーからの手紙 / 助川征雄

ふたりぼっち―精神科ソーシャルワーカーからの手紙

ふたりぼっち―精神科ソーシャルワーカーからの手紙

 

 精神科ソーシャルワーカーPSW)である著者は30年間にわたり、『支援』という日常の中で様々な想いをその胸に刻み続けてきた。患者が障害を乗越えること、真の社会復帰を果たすこと、そして、かけがえのない幸福を取り戻すこと。
本書には、著者がこれまでに出会った『忘れ得ぬ人たち』に宛てた手紙が綴られている。そこにはPSWとしての喜びや哀しみ、葛藤が見事に描かれているとともに、著者ならではの卓越した視点から、精神障害者への地域によるさらなる支援の必要性、精神保健福祉行政が抱える矛盾や、今なお潜在する人権問題を鋭く指摘している。

 これ、かなり面白いです。著者である助川先生が30年間の支援を通して出会った、さまざまな人たちに宛てた手紙(を模した文章)をまとめた作品。会話体の書簡と思えば、とても読みやすい。PSWのやりがいや社会的役割を、読者に語りかけるように紹介する一方で、過去の亡くなられたクライエントに対する文章などは、当時の若き助川先生の無念さがひしひしと伝わってくる。2002年出版ということもあり、01年の池田小事件から03年の医療観察法制定への前日譚も紹介されている。

フロイト先生のウソ / ロルフ・デーゲン

フロイト先生のウソ (文春文庫)

フロイト先生のウソ (文春文庫)

 

多重人格者なんて存在しない。心理学のウソをあばく!
精神病や神経症は心理療法で治るのか? 人間心理のメカニズムはそんなに単純ではない。フロイト以降の通説、俗説を一刀両断する
アダルトチルドレン買い物依存症燃え尽き症候群…心の不調を感じたら専門家のカウンセリングを受けるのが常識といわれる。しかし、その常識、ちょっと待っていただきたい。あなたは“心理学業界”の術中に陥ってはいないか。「心理療法にはおまじない以上の効き目はない」と喝破し、“業界”から目の敵にされた著者の問題の書。 

とある勉強会でオススメされたのでさっそく買ってみた。タイトルもさることながら、書き出しもすごい。『心理学は最も重要な学問であり、同時に最もどうでもいい学問である。』のっけから各方面にケンカを売っていくスタイルは、小沢牧子の「心の専門家」はいらない (新書y)という本を思い起こす。肝心の内容はというと、心理学の各領域で定説とされる考え(と無条件に信奉する学徒)を適宜検証していくというもの。一昔前の心理学では、RCTやメタ分析もせずに受けいれられてきた学説も多いため、今になってボロが出ているのでは、という感じ。元心理学専攻的には面白い。ただひとつ注文をつけるとすれば、あまりにも専門用語が多いので、「心理学をディスりたい心理学関係者」を読者層に設定しているふしがある。内輪向けすぎる。注釈もなく出てくる『ドードー鳥の裁定』なんて言葉、心理療法関係者ぐらいしか知らないでしょ。そういえば、同著者のオルガスムスのウソ (文春文庫)という本も気になった。こっちは堂々と書店では買えないなあ。

 拡張幻想 (年刊日本SF傑作選) 2011 / (編)大森望日下三蔵

拡張幻想 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

拡張幻想 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

 

 そうそうたる顔ぶれによる、2011年の日本SF短編の精華。今年度版には18編を収録した。コミックや同人誌作品も収める。巻末には第3回創元SF短編賞受賞作を掲載。

かねてより購入したかった、2011年度の日本SF傑作選。やっと手に入れた。忘れもしない、2011年は東日本大震災福島原発事故があった年である。科学の発展がもたらす未来という点において、日本SFの方向性ががらりと変わったという。短編SFのオムニバス本なので、スキマ時間にちょくちょく読んでいく予定。