読書が苦手な人にこそ読んでほしい、短編アンソロジー5冊
短編アンソロジーとは?
- 異なる作家の短編作品を、特定の基準に沿ってまとめた書籍
・一般的に原稿用紙10~80枚が一作品あたりの長さの基準とされる(短編小説 - Wikipedia)
・実際にはショート・ショートや散文詩が載っていることもある -
掲載作品数は一冊あたり10前後だが、50以上の場合も
短編アンソロジーをオススメする理由
- 読み終えるのに時間がかからない
・スキマ時間に読める
・登場人物の把握が簡単 - 多くの作家に触れられる
・異なる作風・文体が一冊で楽しめる
・自分にあった作家を見つけられる - 短編ならではの展開の妙がある
・必ずしも『序破急』『起承転結』ではない
・伏線登場と回収が数ページ内に収まる
てなわけで、以降紹介していきます。
名短篇、ここにあり (筑摩書房)
本の目利き二人の議論沸騰し、迷い、悩み、選び抜かれたとっておきのお薦め短篇12篇。半村良「となりの宇宙人」、黒井千次「冷たい仕事」、小松左京「むかしばなし」、城山三郎「隠し芸の男」、吉村昭「少女架刑」、吉行淳之介「あしたの夕刊」、山口瞳「穴」、多岐川恭「網」、戸板康二「少年探偵」など、意外な作家の意外な逸品、胸に残る名作をお楽しみ下さい。文庫オリジナル。
各話10~40ページ。人気作家が選ぶ文芸作品集は、どれも発想と技巧に富んだ小説ばかり。ジャンルはSFからミステリ、ホラーチックなどさまざまで、アンソロジーならではの「つまみぐい」が堪能できる。amazonレビューでは吉村昭『少女架刑』の評価が高いが、個人的には松本清張『誤訳』を推したい。巻末の北村薫と宮部みゆきの対談も面白い。
Story Seller(新潮社)
これぞ「物語」のドリームチーム。日本のエンターテインメント界を代表する7人が、読み切り小説で競演!短編並の長さで読み応えは長編並、という作品がズラリと並びました。まさに永久保存版アンソロジー。どこから読んでも、極上の読書体験が待つことをお約束します。お気に入りの作家から読むも良し、新しい出会いを探すも良し。著作リストも完備して、新規開拓の入門書としても最適。
各話80~100ページと、短編小説にしてはやや長めのボリューム。作家陣の略歴と著作リストも載っているので、人気作家の見本市的書籍といえよう。全話読み切りを謳ってはいるが、たとえば佐藤友哉『333のテッペン』のようにシリーズものをそのまま載せているケースもある。
超短編アンソロジー(ちくま文庫)
初の国産「超短編」アンソロジー。数文字から数百文字のミクロの物語、超短編とは、小説、詩、エッセイ、寓話…ジャンルの境界を漂いながら「短さ」によって生命を与えられた作品群の呼び名だ。古典と現代をつなぐ時の線上に超短編をとらえ、ホメロス、キャロル、カフカ、宇野千代、稲垣足穂、村上春樹、安部公房、川上弘美、筒井康隆などの作品95編を集めた。超短編入門のための解説も収録。
ホメロス『オデュッセイア』の一節から、桂枝雀のネタまでカバーしている、よくもわるくも「やりたい放題やった本」。超短編の名に恥じぬ短さは、3ページ以上あるのがめずらしいレベル。トイレで用をたすついでに5作品は読める。
短編工場(集英社文庫)
読んだその日から、ずっと忘れられないあの一編。思わずくすりとしてしまう、心が元気になるこの一編。本を読む喜びがページいっぱいに溢れるような、とっておきの物語たち。2000年代、「小説すばる」に掲載された短編作品から、とびきりの12編を集英社文庫編集部が厳選しました。
各話20~50ページ。上記紹介どおり、ちいさな幸せを見つけるような、読後感すっきりの作品が多くまとめられている。だからこそ、道尾秀介『ゆがんだ子供』のピリリと辛いホラー作品がひときわ輝く。通勤・通学時に読みたい。
SUDDEN FICTION─超短編小説70(文春文庫)
- 作者: ロバートシャパード,ジェームズトーマス,Robert Shapard,James Thomas,村上春樹,小川高義
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1994/01
- メディア: 文庫
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SUDDEN(サドン)―「いきなり」「だしぬけ」、「おもいがけない」、ぴんと張りつめて、油断のならない。長編小説が200ページかかってやることを、たった1ページでしてのける、とびきり生きのいいショートショートのアンソロジー。ヘミングウェイからカーヴァー、ブラッドベリー、さらに本邦初訳の手練の佳品がぎっしり詰まった576ページ。
各話2~10ページ。海外作家の短編が読みたい、村上春樹の翻訳に触れたいという人におすすめ。レイモンド・カーヴァー『生活の中の力学』など、読者の解釈によってはスラップスティックにもホラーにもなりうる、「読む人を試す」作品が多い。個人的に好きなのはドナルド・バーセルミ『ジャズの王様』、マーク・ストランド『犬の生活』。
まとめと雑感
- 電車内の暇つぶしに最適
- 飽き性な自分でも楽しく読める
- 文学が持つ多様性と奥深さに触れられる
- 『文章力』の勉強になる
日常生活のわずかな時間で読めるだけでなく、短い言葉で強固な世界をつくりあげる難しさと美しさを学べる。それが短編アンソロジーのおもしろさだと思うのです。長編小説を読み終えたら、次の小説を探すまでの肩慣らしとして、短編アンソロジーに触れてみるのはいかがでしょうか。